良いお天気ねぇ。
川面もキラキラ輝いて。
旅行はいいわねぇ。
咲良、あんたねー。
一緒に旅行しようて言うから来たのに。
ここ、近所の河原じゃん!!
川のせせらぎ。
鳥の声。
目を閉じれば聴こえてくるみたい。
こら、無視すんな!
「普段行かないところに出かけましょう」だ。
そりゃ寒いし、水辺になんか来ないよ!
まぁまぁ、怒んないの。
冬休み遠出してないって、詠美が言うから。
旅行を企画してあげたんじゃない。
だから、近所は旅じゃないって。
特別な物がなんにもない。
見慣れた景色が続いてるだけー。
特別に和装してるじゃない。
私が見立ててあげた足利銘仙。
とっても良くお似合いよ。
誰が和装美人だって?この褒め上手。
着物って、地味な印象あったんだけど。
こんな派手な柄もあるんだね。
晴れ着と比べるとね。
銘仙は他と違うの。
派手で個性的な柄が魅力。
そのくせ着てみると、しっくりくる。
なんでこんなに上品なんだろう。
模様のフチがギザギザしてるせい?
いいところに気づいたね。
絣の技法を用いていて、境界があいまいなのね。
生地には、縦糸と緯糸があるんだけど。
その話、長い?
ここにいると寒いよ。
歩きながら聞く。
そうね。
銘仙は薄くて軽いのも特徴だから。
動いて暖かくしましょうか。
着物なのに、すごく動きやすい。
歩いててかなり楽だね。
咲良が町歩きに選んだのが分かるよ。
用途を選べるほど、着物に詳しくないよ。
お店で見かけて気に入ったの。
ひとりで出歩くのは、浮いちゃうかなぁって。
あんた、それが本音か。
帰りにぜんざいを要望。
絶対だよ。
いいよ。お腹から温まろうね。
そういえば、絣ね。
縦糸と緯糸をわざとずらして色をぼかすの。
昔の人って、すごいね。
この柄だって、今でも通用するよ。
モダンで都会的だよ。
昭和のはじめに流行したんですって。
いつの時代も、女心をわしづかみするのは、デザインね。
一般大衆が足利銘仙を着てたんだから。
当時のトレンドだったんだ。
欲しがる気持ち、わかるなー。
私だって、これなら着てもいい。
ほんとに?
それなら、もう少し遠くまで行きましょうよ。
歩き慣れた翔栄町だけど、いいよね。
時間が無くてもすぐ行けるのが近所の良さだね。
あーあ、冬休みは遠出したかったなぁ。
温泉に入ったり、お寺巡りとかしたかった。
いいね!
時間が取れたら、お出かけしましょうよ。
春休みなら、花見もできちゃうね。
咲良も来るなら、うれしいな。
歩きながら、旅行のプランを相談しよう。
それと、銘仙を買ったお店に連れてって。
そうね。
他にどんな柄があるか、私も知りたい。
足利銘仙は気分を盛り上げてくれるよ。