裕二くん。
今日はこっちなの。
皐月祭ぶり。
や、香穂里ちゃん。
今朝コンビニ寄り忘れて。
祭りが終わると会う機会ないね。
そだね。
ブースで毎日一緒だったのに。
それ、雑誌?
そそ。
少年マンガ。
一日ひまで困ったわ。
ひましてないで勉強しなよ。
うちのクラスも似たようなもん。
祭り気分が抜けてないね。
わかる。
学園祭が楽しすぎるんだよ。
でも、部長が来週から秋の準備だって。
そうなの。
あぁ、私も準備しなくちゃ。
翔愛祭では、個人出展するの。
じゃ、こっちは手伝えないか。
メンバー減るの痛いなぁ。
それで、何やるの。
そっちも店番入るようにする。
新作小説のスライド。
皐月祭で触発されちゃって。
あぁ、なんか言ってたね。
面白いお話読んだって。
ブース主と友だちになったんだっけ?
うん。
私も創作するんだって、カミングアウト。
翔愛祭で見せるって約束したよ。
そっかそっか。
仲間ができるのは嬉しいな。
がんばって。
それで、ネタ探してて。
裕二くん、心当たりない?
感動した話とか、面白かったネタとか。
僕にとっては、これかな。
マンガ、面白いよ。
貸してあげようか。
それは遠慮する。
マンガ読みだしたら、時間忘れる。
現実逃避だよね。
ふむ。
それ以外となると、わかんないな。
役に立てずに申し訳ない。
いーのいーの。
ネタ探し続けてみる。
ああ、でもツライな。
ツライ?
今日は日差しが強い。
暑さでバテてきたんじゃない。
いいネタが見つからないからだよ。
面白いお話、書きたいのにー。
あの子に仲間って認定してほしい。
あぁ、そっか。
創作仲間と約束したんだっけ。
いい作品、見せたいよな。
作者が楽しむって大事だったんだよ。
私は逆だって思ってた。
読者がしらけるって、決めつけてた。
ネタ探しは後日にしたらいいよ。
そこまでムキになることもない。
学生の祭りなんだからさ。
ムキになってない。
私もあんな風に好きをぶつけたい。
趣味全開でも、読者には伝わるの。
苦し紛れのネタで、無理やり書くの?
作者が楽しむことが大事なんだろ。
毎日を楽しく過ごせば、いい話書けるんじゃないの。
その通りだわ。
まずは私が楽しまなくちゃ。
毎日を楽しく過ごすって、どうしたらいいの。
じゃあ、今日はこれ。
そこのカフェ、入ろうよ。
制服だと抵抗ある?
うん、少し。
学校帰りに飲食したことないから。
店員さんに怒られ…。えぇぇっ。
ほら、行くよ!
たまには違うことしてみよう。
学生のデートと思われたら愉快だね。
手、ひっぱったら痛いよ。
あはは、私たちカップルに見える?
それ、ネタにしよっかな。