僕の夢を君の曲にのせて

おはよー。
その荷物、どうしたの。
ゴミ袋に入れちゃって。

おはよう、可奈子。
学校行く前に、捨てていくんだ。
持ってると未練だから。

柊月。
これ、ほんとにゴミ?
小冊子のように見えるけど。

ゴミだよ。
僕の書いた話なんて、需要がない。
誰も読んでくれないから、心が折れたよ。

書き上げたの?
前に言ってた小説。
すごい、見せて!

見せたくない。
ああ、才能があればなぁ。
可奈子はいいよ。作曲できるんだから。

え~。
ど新人よ、私。
4月に始めたばっかりだから。

誰ももらってくれないんだ。
表紙めくって、ポイ。
あげるって言っても、いらないって。

それで、何冊もあるんだね。
そぉ、誰ももらってくれないの。
じゃあ、私にちょうだいよ。

あげないよ。
これは、ここに捨てていくんだ。
僕の青春は、冬と共に去るんだ。

ゴミ捨て場に置いたね。
じゃあ、権利を放棄したってことで。
いざ開封~。

こらぁ。
勝手に開けるな。
勝手に読むな。

ページが黒いよ。
文字が詰まりすぎ。
返された理由、ちょっと理解できた。

コピー代対策だよ。
なるべく隙間を減らさなきゃ。
べつに読めるから、問題ないよね。

そりゃ、読めるけど。
さし絵が一枚も無いのね。
どんな場面か想像できないよ。

別に、普通の学園モノだし。
普通の学生しか出てこない。
想像しなくたって、分かるだろ。

作者はそうだろうけどね。
例えば、ふたつしばり。
男の子に分かるかなぁ?

ふたつしばり?
いや、分からない。
頭を振ってどうしたの。

これ、これ。
髪の毛見てよ。
ふたつの束にしばってあるでしょう。

あぁ、髪型の名前か。
そういうのツインテールしか知らないから。
古風な呼び方があるんだね。

でしょ、でしょ?
絵は大事なんだってば。
このままじゃダメだよ。

もういいよ。
そんなダメ出し。
立ち話してると、遅刻する。

もっと良くなるよ。
このお話のBGMを作りたいな。
それでねー。

CDをおまけにつけて、どうなる。
聴きながら読んでください、か?
ダメダメ、そんなの誰も手に取らない。

絵をつけて、動画にしようよ。
学園にも、動画配信してる子いるよ。
今すっごい流行ってるんだから。

流行にのっても話題になるとは限らないよ。
その袋、持っていくの?
荷物になるだけだよ。

私だったら悔しいな。
自分はこんなステキな話を書けるんだ。
誰かに知ってほしいよね。

そりゃそうだよ。
でも、そんな自分が嫌になってるんだ。
他人の好意に期待して、裏切られて腹立ててる。

あは、私も一緒。
もっと曲が評価されるべき!って。
誰も気に留めてくれないけどね。

可奈子の曲と、僕の話。
動画なら、同時に知ってもらえるんだ。
やってみようか。

やったぁ。
じゃあ次は、声の出演だね。
休み時間になったら、読む人を探してみようよ。

この話は、高校生の男女が出てくるからね。
僕たちでやればいいんじゃないかな。
ちょうど2人いるんだからさ。

そうだね、やろう。
柊月も、やる気が出てきたね。
問題は、絵だよね~。

それも、僕に考えがあるんだけど。
ヘタで良ければ、自分でやろうかなって。
一枚絵なら、できそう。

ヘタとかウマい関係ないよ。
楽しい気持ちは、見た人に伝わるよ。
完成が楽しみだね~。

あのさ、さっきから気になってるんだけど。
動画って、誰が作ってくれるんだ。
学園の動画配信してる人に頼むの?

あのね、柊月。
夢は、自分に期待するから、叶うんだよ。
動画も2人で分担するに決まってるじゃない。

適当にこじつけたろ、今。
まぁ、やってみるか。
俺たちの夢の動画、作ろう。

可奈子可奈子
翔愛学園高等部1年生
入学してから、作曲を勉強中。
多くの人に聴いてもらうのが夢。

柊月柊月
翔愛学園高等部1年生
小説家にあこがれて、自信作を小冊子にしてみた。
誰にも読んでもらえなくて、夢を諦めてしまう。

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