桜並木にいるの、知らない子だなぁ。
ちょっと道を変えないか?
今日は裏門から行こう。
遠回りだよ。
あれ、きっと新入生だよ。
挨拶していこうよ。
えー。
むりむりむり。
俺はパス!
もう、和弘。
上級生なんだから、ちゃんとしてよ。
話しかけてみようよ。
おーい、南々緒。
俺は知らないからな?
あっちから行くよ。
待って。
あの子、うろうろしてる。
どうして学校に行かないのかな。
え?
あぁ、本当だ。
女子寮とカフェの間を行き来してるな。
困ってるなら、助けようよ。
顔が、しょぼんとしてるよ。
さ、和弘の出番だよっ。
さ、じゃねえよ。
南々緒の方が得意だろう。
聞いてこいって。
もー、なにそれ。
わかったわ。
和弘は、ここにいて。
頼んだぞー。
さすが南々緒。
もう打ち解けてる。
桜並木の向こうを見て。
正門は、あそこ。
いえいえ、どういたしまして。
お見事!
南々緒はすごいな。
満開の花みたいに相手を笑わせて。
そうかな?
これくらい、誰でも。
和弘にだって、できるよ。
かなぁ?
初対面の相手は、苦手だな。
俺を見て、しかめ面するし。
見間違いだよ。
それより、理由が分かったよ。
桜が校門の目印って、思ってたみたい。
あー。
門の両脇に桜の木か。
そういう学校もあるな。
和弘って、割と人見知りなんだね。
今まで気づかなかったなぁ。
私とは平気で話してるのにね。
そうだよな。
初対面のときから普通に。
なんでだろうなー。
私が緊張してなかったからじゃない?
顔がこわばると、相手もつられちゃうよね。
リラックスって大事よ。
だから、そこだよ。
どうしたら緊張しないんだよ。
俺なら初対面の相手を見たら、逃げ出すね。
えっとね。
自分から声をかけると緊張を取り除けるんだって。
本の受け売りだけどね。
なるほど。
自分のペースに持ち込むのか。
今度ためしてみよう。
うんうん、やってみて。
新入生がたくさん来る季節だからね。
親切な先輩がいると、安心できるよね。
俺はべつに、面倒くさがってないんだ。
知ってることは、色々と教えたい。
もちろん挨拶だって、交わしたいんだ。
普段のあなたは、笑顔が優しいんだから。
眉間にシワ、寄せちゃダメよ。
大事なのは、自分がリラックスすること。
いつも相手が怒った顔してたの、そのせいか。
あのときの南々緒、ニコニコしてたもんな。
俺の緊張まで、取り除いてくれたんだ。
君だって、そうだよ。
笑顔で接してくれたから、仲良くなれた。
来年も一緒に桜、見たいね。
南々緒 翔愛学園高等部2年生
和弘の親友。
初対面の人と仲良く話せる特技を持っている。
和弘 翔愛学園高等部2年生
初対面の人が居ると、緊張のあまり眉間にシワが寄る。
怖がられるので、その場から逃げ出すようにしている。